近年、リチウムイオンバッテリー(以下:LiB)に関連する火災事故が急増しています。
製品評価技術基盤機構(NITE)の調査によると、過去5年間で報告された事故は1,860件にのぼり、そのうち約85%(1,587件)が火災に発展しています。
月別の推移では、暑さが厳しくなる6~8月にかけ火災事故が増える傾向にあります。


※出典:製品評価技術基盤機構(NITE)
「リチウムイオン電池搭載製品による火災事故の発生状況について」
LiB火災は保管・管理方法のわずかな不備によって、施設の全焼という甚大な被害につながる可能性があります。
火災による損失は、建物や設備の焼失にとどまらず、製品・資材などの資産の喪失、操業停止による経済的損害、そして人命にも危険が及びます。

製造工場にて、充電中のLiBを搭載した工具から火災が発生しました。発生時は夜間の無人時間帯であったため初期対応が遅れ、これが被害拡大の一因となり、結果として作業棟が全焼し、鎮火までに約2日近い時間を要した大規模な火災となりました。

業務用の電動バイクを充電中に火災が発生し、作業員が異常に気づいて消防へ通報しました。火は約1時間で消し止められましたが、停めてあった十数台の電動バイクと車庫が全焼し、建物も含めて大きな被害となりました。
LiB火災は保管・管理方法のわずかな不備によって、施設の全焼という甚大な被害につながる可能性があります。
火災による損失は、建物や設備の焼失にとどまらず、製品・資材などの資産の喪失、操業停止による経済的損害、そして人命にも危険が及びます。

LiB火災は保管・管理方法のわずかな不備によって、施設の全焼という甚大な被害につながる可能性があります。
火災による損失は、建物や設備の焼失にとどまらず、製品・資材などの資産の喪失、操業停止による経済的損害、そして人命にも危険が及びます。

LiBの特性や発火リスクについて、使用者が十分に理解していないことも発火事故の要因です。
適切な使用・管理方法を理解し、日常的に注意を払うことで、発火事故は未然に防ぐことが可能です。発火リスクに関する知識の普及と教育が、火災対策の重要な鍵となります。

社会全体でのLiBの廃棄方法に関する認識不足や、インフラ整備の遅れも、発火事故の増加要因となっています。ごみ収集車や処理施設での火災事故は増加傾向にあり、施設が全焼する深刻なケースも発生しています。
これらの課題に対応するには、社会全体でのリスク認識と包括的な対策が必要です。

LiBが発火すると、内部で急激な化学反応が起こり、数百度に達する高温が発生します。特に「熱暴走」と呼ばれる現象では、バッテリー内部の温度が制御不能な状態となり、連鎖的にセルが発火・爆発する危険があります。
発火時にはスパーク(火花)や破裂による飛散物が発生することがあり、周囲の可燃物や人に直接危害を及ぼす可能性があります。高温の金属片や火花が飛び散ることで、二次火災の誘発や作業者の火傷・眼の損傷などのリスクが高まります。
LiB発火時には、電解液の分解や絶縁材の燃焼により、有毒なガス(例:フッ化水素、一酸化炭素、有機溶剤由来の揮発性化合物など)が発生します。これらのガスは目や喉への刺激だけでなく、長時間吸引すると呼吸器系への深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。密閉空間での発火は特に危険であり、作業者の避難や換気が遅れると、二次災害につながる恐れがあります。
LiB火災は、水による消火が困難で、場合によっては内部の化学反応を促進して炎が激しくなることがあります。また通常の消火器でも鎮火が難しいのが特徴です。
そのため、化学反応火災専用の消火剤や、バッテリーをLiB火災対応ブランケットなどで隔離して、反応を封じ込める処置が必要です。完全な鎮火には、水没(※)による冷却と酸素遮断が有効です。
※専門的な設備・手順をご確認ください。

LiBは、長期間の使用による劣化でセパレータ(絶縁体)の損傷や電解液の分解が進行し、セル内部で短絡が発生して熱暴走による発火の可能性があるほか、製造時の異物混入や絶縁不良などの微細な欠陥によっても同様に発火の危険性があります。
● 購入時期、使用履歴を記録する。
● 使用目安期間を過ぎたLiBは、使用しない。

LiBは、落下や強い衝撃によって内部構造が損傷し、セル内で短絡が発生して熱暴走による発火につながる可能性があります。
外装が破損すると、電極が露出して即座に発火する危険もあります。見た目に異常がなくても内部にダメージが蓄積している場合があり、そのまま使用すると危険です。
● 落下・強い衝撃を受けたLiBは使用しない。
● 落下・衝撃履歴を記録し、発火リスクがあることを共有する。
● 廃棄する場合、廃棄まで安全な場所で保管する。

LiBは、定格電圧を超えて充電されると、発火のリスクが高まります。特に保護回路が故障している場合には、電圧や電流が異常に上昇し、危険性が増します。
また、過放電によっても保護回路が正常に機能しなくなる可能性があり、その状態で再充電を行うと電流制御ができずに、熱暴走を引き起こすことがあります。
● 夜間など、無人の状態で充電しない。
● 異常な充電パターンがある場合、記録・共有する。
● 延焼しやすいものの近くで充電しない。

説明書に記載されていない使い方や、設計外の用途で使用すると、内部に過負荷や異常が生じ、発火につながる可能性があります。
故障やパーツの破損、端子への汚れや金属接触、水や湿気の多い場所での使用などの場合も、接触不良・ショートなどによって、発火のリスクが高まります。
● 説明書などに記載のない使い方はしない。
● 故障やパーツ破損などがあるLiBは使用しない。
● 端子への汚れや金属接触に気を付ける。
● 水や湿気の多い場所では使用しない。

高温環境下での使用や保管は、内部温度が上昇し、セルの安定性が損なわれることで熱暴走を引き起こす可能性があります。
特に、直射日光下や密閉空間での放置は、発火や爆発のリスクを高めます。
● 高温になりやすい環境で使用しない。
● 夏場の車内などに、LiB製品を放置しない。
● 凹面鏡などの収斂火災や、高温になりうる場所にLiBを置かない。

模造品や非純正のLiBは、品質管理や安全設計(過充電防止機能や温度制御機能)が不十分な場合が多く、発火リスクが高い傾向にあります。
さらに、正規品と偽った販売や、正規品とのすり替えによって、使用者が気づかないまま危険なバッテリーを使用するケースもあるので注意が必要です。
● メーカー非推奨の非純正製品は、購入・使用しない。
● 非純正製品との、すり替え防止のための目印をつける。
定期的にLiBをチェックできる仕組みがあると、社内で発火リスクを共有しやすくなります。運用しやすいLiB定期チェック表などを準備して、発火リスクに備えましょう。

📄小~中型リチウムイオンバッテリーの安全な保管・管理ガイド【PDF】


